
(写真:20190212撮影 ネコヤナギ、フリージア、スイートピーを使用)
数年間ブログおサボり状態だったので、ちょっと遡ったお話になってしまうのですが、2018年の12月から、自身の植物に関する視野や世界観を広げる学びアップデート、それと新社屋(兼自宅)に移るのを機にライフスタイルをガラッと変えてみたいという想いから、趣味と勉強を兼ねて、生け花のレッスンに通っています。
(写真:20190129撮影)
↑写真は、習い始めて2ヶ月め、2019年1月後半の回で生けた作品です。このグラジオラスを使った縦長造形の作品で100点をいただきました ^^
根付きの植栽にこだわり、切り花とはずっと距離を置いてきた私ではございますが、自分の中の常識を打ち破るには「自分が最もしなさそうなこと」をしてみるのが結構効果的だったりしますよね。生け花のお教室に通うようになって、植生の組み合わせを重視する植栽とはまた別の、自然といったん切り離された幻想的な視覚・空間芸術としての植物の世界に出会えたように思います。植物という同じ素材を使いつつも大きく違う世界。その両方に触れ親しむことで、相補的により大きな植物観を獲得してそうな予感をヒシヒシ感じております。というわけで、これからはレッスンで生けた作品も記録として残していきますね。^^
話は戻りまして、生け花のレッスンですが、ご高名なピアニスト・スーパーピアノ講師であり、草月流生け花の師範でもいらっしゃる笠原智廣先生のお花教室に入門しました。
もともとは笠原先生のピアノアカデミーで不定期で開催されるピアノリサイタルがいつも素晴らしく、何回か通わせていただいているうちに、お花教室も主宰していらっしゃることを知り、習い始めることにしました。
笠原先生のお教室が乙庭新社屋移転先と同じ前橋市市内にあり、仕事をしながらでも無理なく通えるのもありがたいですし、なによりも、お花だけでなく音楽や食にも精通していらっしゃる先生の幅広い世界観に接することができるので、単にお花を学んでいるのとは違う「ハイブリッドな教養」が得られ、毎回新鮮な刺激と学びをいただいております。
同じクラスの他の生徒さんもいろんな職種のキャラ濃い方々揃いで、皆さんとのおしゃべりも面白く、私にとっては楽しい社会勉強の場にもなっており、いろんな面で「入門してよかったなぁ」と実感しています。
現在のレッスンは、まずは流派的な形式にとらわれず、いろんな技法や魅せ方の勘所を教えていただきながら、毎回、全員に同じ花材が与えられ、各々が花器や生け方を変えて3バージョン自由に生けて、先生に講評いただくようなスタイルです。普段の生活の中で、自分で考え独創的に花を飾れる素養が身につくので、とても実用的なレッスンスタイルと思います。
(写真:20181214撮影)
ちなみに↑の赤いガーベラを使った作品は、通い始めて2回目に生けたもの。はじめたばかりで生けた割にはキャラの立った作品になったと思います。ちょうどこの回の話題で、先生が教えている音大で行われたスタジオ収録演習授業で、詩の朗読に合わせて先生がエリック・サティのグノシエンヌ第1番を演奏したというお話をしていて、その音源を聴かせていただいていたんですね。その録音からのインスピレーションで生けました。
その詩ですが、「舞台の中央に捨てられた裸の心臓」、「蛇腹な私がめくられてく」、「不埒なあなたが舌を出す」など、独特の不気味さ不吉さを漂わせる語彙が散りばめられていて、なんだか聞きおぼえあるなぁ、なんて考えていたら、歌手UAさんの「泥棒」だと思い出しました(アハ体験ですね)。
「泥棒」(2002)は、UAさんのアルバムタイトル曲でもあり、UAさんの歌はもちろん、ジャケ写から歌詞の独特の世界観にいたるまで徹底的な統一感があり、UAさんの作品の中でも特にアーティスティックな傑作のひとつです。アルバムの完成度もとても高いのですが、私的には、なんといってもシングル「DOROBON」に収録されている岸田今日子さん朗読による「独白」バージョンが大好きでお気に入りでした(紙ジャケのアートワークも素晴らしいです)。
笠原先生のグノシエンヌ伴奏付き朗読バージョンは、「独白」の真夜中っぽい世界観が見事に再現されていて、とても刺激的でした。
ちなみに、私の最近のグノシエンヌ愛聴盤は、高橋悠治さんによる新録音の方(2017)です。
高橋悠治さん1976年録音盤と比較して聴いてみても面白いですね。
ちょうど、新社屋(兼自宅)への引っ越しに際して、手持ちのアナログレコードやCD(約5000枚 ^^;)を全て断捨離下取りに出した直後で、「泥棒(アルバム)」「DOROBON(シングル)」ももう私の手元にはなく、ちょっと悔やまれましたが、モノへの執着を断たないと家は片付かないので、これでよいのでしょう。今日はamazon music unlimitedで聴き直しました。物体として所有しなくても音楽を楽しめるようになり、便利な時代ですね。めでたしめでたし。 ^^
ちなみにアルバム「泥棒」の中での私のお気に入りは、「記憶喪失」と「泥棒」、そしてベストが「瞬間」です。「瞬間」の歌詞、切なすぎる感情の機微を象徴的な物語に昇華していて、素晴らしいとしかいいようがないです。
そんなこんなで、音楽の方に話が脱線しましたが、ピアニストであり華道家でもある先生のもと、古典芸能のカタにはまり過ぎず、イマジネーション豊かにお花を楽習させさていただいています。^^
「 住する所なきをまず花と知るべし。(※)」
(世阿弥 猿楽師・能楽師 1363 – 1443推定)
※「同じ場所で留まるのではなく、常に変化し続けることが芸の美しさの本質である。(現代語訳)」
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