
休日の夜、息抜きと爪研ぎも兼ねて、ファッションデザイナー、アレキサンダー・マックイーン(1969-2010)の、常に孤高でセンセーショナルなファッションを世に送り出し続けた人生の栄光と、自ら命を絶つまでに至った心の闇を追ったドキュメント映画「マックイーン:モードの反逆児」(2018年製作)を鑑賞しました。
余談ですが、2019年7月に乙庭新社屋に引っ越したのを機にテレビを見ない生活をしていて、amazon のFire HD 10inchを購入し、家での読書と映像鑑賞をコンパクト&ポータブルに集約してしまいました。見たい映像はprime ビデオで見るようにし、もう少しこの生活に慣れたら、手持ちのテレビを捨ててしまおうと思っています。
私的には家で大画面の映像を見たい欲求はさほどないので、今の私にはこの大きさでほぼ充分。あまりモノを持たずに、且つ、趣味の読書や音楽・映画鑑賞などを、より時代に即した便利なスタイルで存分に楽しみたいと思っていて、大きなテレビで観る場所を固定されてしまうより、小さい画面(とはいえスマートフォンよりは大きい画面 ^^;)で、観たい場所でササっと鑑賞できるタブレットの身軽さが快適と感じています。
では本題。件の「マックイーン:モードの反逆児」について、私の記憶に焼き付いているマックイーンのショー映像をいくつかご紹介しながら書いていきますね。 ^^
私は、自分が着るというよりは、ファッションデザイナーが打ち出す先駆的な美的ビジョンやクリエイティビティが与えてくれる刺激がとても好きで、姉がファッションの仕事をしていたというのもあり、高校生の頃から、アート鑑賞に近い視点でファッション誌のコレクション特集号やショーの映像をよくチェックしていました(いわゆるオタクですね ^^;)。
1995-96 A/W (HIGHLAND RAPE)。伝説の始まり!物議醸しすぎでしょう ^^;
“他人そして自分自身にどう思われてもよかった。だから心の奥深い闇から恐ろしいものを引き出しランウェイに乗せるんだ。”
その頃(1980年代末〜90年代)は、ディオールの抜擢される前のジョン・ガリアーノや、アレキサンダー・マックイーンが頭角を現してきた時代で、彼らが作り出す、ハイファッションともパンクとも違う、新しい「破壊的創造」にメチャ興奮していました。
2001 S/S (VOSS)。病んだ美意識にすごく刺激を受けました。まさかのWitkin的ラストは戦慄モノ!
“人生も人も完璧じゃない。誰もがモデル体型じゃない。美は見る人次第だ。”
特にマックイーンのショーは、その後の彼の生涯を通して一貫して、ファンタジックでエモーショナル、どのシーズンもファッション史に楔を打ち込んでいるかのような、かけがえのないショーだったように思います。ときには暴力的だったり、目を背けたくなるような背徳や既成価値への反抗で攻め込んできつつも、決して抗うことがでこない圧倒的な美がありました。
ファッションと植栽、分野は違いますが、既成概念を常に疑い新しい価値観を切り拓いていくマックイーンの創作姿勢に、私も大きな影響を受けていますし、表現することへの勇気をもらいました。
2007 S/S (Sarabande)。最も好きなショーのひとつ。退廃美の極致!シャンデリアと室内楽の演出も最高です。
常に反逆的・刺激的でありながら胸がしめつけられるように感動的なのは、やはり、単なる奇抜さとは違う、卓越した技術と伝統への理解、ファッションへの愛があってこそのものと思います。
2003-4 A/W (Scanners)。ラストの富永愛さんが劇的過ぎ!どこからこういう演出を思いつくのか?ホント凄いです。
本映画では、失業保険を受け取りながら、凄まじい情熱と創造性でファッションを学び吸収していったマックイーンのファッションデザイナーとしての出自から、「切り裂きジャック」をテーマにした卒業コレクションでマックイーンの才能を見出し、彼をコレクションデビューへと導いた「ヴォーグ」エディター、イザベラ・ブロウとの友情ともつれ。そして、若くしてジバンシィのオートクチュールデザイナーに抜擢されたりと、もの凄い速さでファッション界の頂点に華々しく上り詰めつつも、同時に自身を取り巻くめまぐるしい状況に翻弄され、周囲との関係や精神が蝕まれていった経緯が描かれています。歴代のショーについてもその制作時の心情や背景が描かれていて、マックイーンのクリエティビティについても理解が深まりますね。
遺作となった2010-11 A/W (Angels & Dæmons)。もはや崇高としかいいようがない!
ファッションに限らず、新しいデザインや価値観を世に問うクリエイティブな仕事をしている人には、創造のエキサイティングな部分と、新しいものを生み出し続ける苦悩や不安をひっくるめて、アツい共感と刺激を得られる映画と思います。
では今日のBGM、この記事を書きながら聴いている音楽をば。^^
作曲家マイケル・ナイマンによる本映画のオリジナルサウンドトラック「Ost: Mcqueen: Documentary Soundtrck」です。
マイケル・ナイマンといえば、映画「ピアノレッスン」で使用された「The Heart Asks Pleasure First」が有名ですよね。私的にはピーター・グリーナウェイ監督作品での一連の映画サウンドトラックが好きでした。
この「Mcqueen」のサントラ盤は、新曲もありつつの、タイトルは変更されていますが、旧作品の別バージョン再録も多く入っていて、マイケル・ナイマンの最新とアンソロジーを併せて聴けるお得版と思います。ジャケットもカッコいいですよね ^^
” You’ve got to know the rules to break them. That’s what I’m here for, to demolish the rules but to keep the tradition. “
アレキサンダー・マックイーン(ファッションデザイナー 1969-2010 )
今日の一冊
Alexander McQueen: Savage Beauty
2011年、ニューヨーク メトロポリタン美術館で開催されたマックイーンの回顧展「Alexander McQueen:Savage Beauty」 の記念図録。歴代コレクションの名作だけでなく、マックーン自身の語録も数多く掲載されていて、各コレクションやファッションに対する彼の想いや姿勢を読み取ることができます。ホログラムの表紙も激カッコよく、大量に紙の本を捨てた私でも手元に残した中の一冊です。
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