
(写真:20191030~1104撮影 乙庭新社屋にて)
2019年10月29日の華道レッスンでいただいた花材を、おさらいとオフィスの彩りも兼ねて乙庭新社屋で生け直してみました。乙庭副代表 松島の作品です。^^
まず、ハロウィンまたぎの週でもあったので、オレンジ色の実とグネグネしたツルが印象的なツルウメモドキ Celastrus orbiculatusと、前回のレッスン花材で長保ちしている観賞用カボチャを組み合わせて床置きにし、インスタレーション仕立てで一作。床色のグラデーションともマッチし、アーティスティックな空間演出になりました。
真上から見たツルウメモドキの茎の有機的なラインも、人間の理性からは生み出せない自由な面白さ・美しさがありますね。ツルウメモドキの実を寄りで見てみましょう。
華道教室の笠原先生のお話ですと、レッスン前日までは淡黄色の実だったそうで、一晩で実がはじけてオレンジ色の仮種皮が露出した状態に変わったそうです。生態的にも面白いですね ^^
ちなみに作品の背景になっている乙庭新社屋の床着彩ですが、私が仕事の合間を縫って、マイペースで巨大な絵画のように塗り進めいます。
3階建ての建物の床全てに着彩をしていきます。塗装ではなく絵だと考えてみると、とてつもなく大きな作品ですね。^^; 色のスタディをしながら隙間時間での作業なので、まだまだ完成に至らないのですが 、複雑な重ね塗りとグラデーションで移ろっていく色合いによって、この建築のテーマでもある「玉虫色」な雰囲気を体現しつつあります。
結構、気の遠くなるような工程なのですが、このような色彩空間に日常的に住むって、とても面白いことかなと思うので、引き続きお絵かき頑張りたいと思います!^^
ここで今日の音楽。この記事を書きながら聞いているBGMをば。
最近お気に入りで注目しているアイスランド出身のピアニスト ヴィキンクル・オラフソンさん(Víkingur Ólafsson 1984- )のアルバム「J.S.Bach Works & Reworks 」のdisc2 のReworksです。^^
バッハの原曲を基に、アイスランドを拠点に活動しているエレクトロニニックノイズミュージックの鬼才 ベン・フロストや、現代音楽家でもあるチェリスト ピーター・グレッグソン、坂本龍一さんなど、先鋭的なアーティストを招いて大胆に再構築した楽曲を収録した、意欲的・実験的な盤です。
オラフソンさんのピアノの音さえも加工されていたり、原曲とは違うバージョンになっていたりして、正当なクラシックとしてのバッハではありませんが、全体的に静かなエレクトロニックノイズ系音楽あるいはアンビエントな雰囲気の「エーテルのような音空間」の中に、バッハの旋律が蕩け・漂っているような雰囲気のアルバムに仕上がっています。いろんな意味で「現代の北欧音楽」を強く感じますね。
そして「ザ・クラシック!」ともいえる正統派クラシック名門レーベル、ドイツグラモフォン社からリリースされているのもとても興味深く、同社の新しい攻めの姿勢を感じ取れる盤です。ジャケットのアートワークも美しいです。
「沈黙の次に美しい音」をコンセプトに掲げるこだわりのジャズレーベルECMの、現代音楽やクラシックに焦点を当て現代的新解釈でリリースしているNew Series 部門を彷彿させますね。
クラシックや現代音楽、ノイズエクスペリメンタル音楽の垣根を取り払って再構築する革新性も面白いですし、音楽的にも知的で静かなひとときのBGMとして響かせるのにぴったりと思います。
では、オフィスフラワーの話に戻ります。^^
お花類は、ガラスの器を使い、華道というよりはブーケアレンジに近い手法で生けました。
ハロウィン仕様の真っ黒に染められたキクが独特の存在感を放っていますね。咲き進んだ紫色のチューリップも頽廃的な枯れ色を帯び始めていて、全体の感じからすると「いい頃合い」だと思います。
後ろの気配を作っているレプトスペルマム ‘コッパーグロー’ Leptospermum polygalifolium ‘Copper Glow’ やパニカム ‘ダラスブルース’ Panicum virgatum ‘Dallas Blues’ で乙庭オリジナル色を添加しています ^^
植栽に携わっていると、自然界のタイムスケジュールやスケールに合わせて花や葉・実の見頃をコーディネートする思考技術が身につきますが、ともすると、自然界のスケジュールや植物の大きさや性質といった制約にしばられてデザインの思考が狭められてしまう危険性が伴いますね。
その点、生け花やフラワーアレンジメントは、自然の開花期や全草の大きさなどにとらわれず、美的な創造性に集中して植物を組み合わせることができます。今日ではハウス栽培や輸入の花材も豊富にありますから、ほぼ季節感を意識しなくてもアレンジを作ることができますよね。でも、あまりに不自然な組み合わせというのは、なんだか美観に結びつきにくいように思います。
その植物本来の姿や性質を知りながら生けるのと、どんな風に生えている植物か知らないままに切られた花を生けるのでは、やはり、生け花を介して伝えられるストーリーの奥行きに差が出てくるのではないでしょうか。植栽と園芸、生け花、そしてフラワーアレンジメント。それぞれの間には同じ植物を扱いつつもジャンルの壁みたいなものがあると思うんですね。そのボーダーを取り払ったメタ視点で植物を扱えるようになりたいなと思っています ^^
何かに頼ることなく、自分だけのオリジナルを「形あるもの、目に見えるもの」にする。こうした、いわゆる発明といえるものは、その人のまごうことなき自信となります。仕事だけでなく、これからを生きる人生の力にもなります。
(松浦弥太郎 文筆家 1965 – )
今日の一冊
「考え方のコツ」(朝日文庫) 松浦弥太郎(著)
私、ACID NATURE 乙庭 太田敦雄の著作本、
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