
2019年4月から私と乙庭副代表の松島ともども師範への道を歩み始めた、草月流生け花のレッスン記録です。^^
2020年最初のレッスン。^^ 気分も新たに教室に向かいました。
今回の花材の中で特徴的だったのは、ひときわ異彩を放つ、石化ヤナギ Salix udensis (syn. Salix sachalinensis) ‘Sekka’ の異形な枝。なぜか「太田さんっぽい素材ね」と皆さんに言われつつ ^^; 、自由花2作品、教科書の型生けを1作の合計3作品を生けました。
余談ですが、石化ヤナギは、日本〜シベリアにかけての地域原産種 オノエヤナギ(尾上柳)の成長点が帯化(綴化あるいは石化)した品種です。
↑は20200114のレッスンでの私の自由花2作です。型生けは私の方針として掲載いたしません。秘すれば花なり、ですね。
今回の花材は、石化ヤナギ以外だけが大きくそして変わった素材で、他がスターチスやスイートピー、キンセンカなど、よく知られていて大きくはない素材でした。そのため、石化ヤナギだけが浮いてしまいやすく比較的全体のバランスが取るのがやや難しかったですね。
逆をいえば、このバランスの悪さが今回の花材の特徴ともいえるので、そのアンバランスさを活かして、ランランラン♬という春ではなく、仄暗い夢想を孕んだ春を生けることにしました。^^
まず1作目は、与えられた花材を全て盛り込んだ大きな作品。二口ある花器を使い石化ヤナギを背景に配置して、暗い海を航る帆船のようなシルエットで生けました。溢れかえるように乗り込んだ花も少しザワつき不穏な雰囲気。スイートピーのコーラルピンクを前に飛び出させ、スターチスの紫色と対比させてコントラストと前後の大きさも出しています。
この作品はなかなかよくできたなと思ったのですが、ヤナギの挿し位置を少しだけ変えた方がよりよいね、ということで、満点ならず。
2作目は、石化ヤナギをギスギスした化け物の触手のように見立て、脳のようにキュッとまとめて生けた花の中から邪悪な魔手が伸びているように演出した作品。生けながらの念頭には、ウィリアム・ブレイク(William Blake、1757-1827)におけるドラゴンのような魔性のイメージがありました。
石化ヤナギを大胆に前に倒して出すことで異様な遠近感を強調しています。平和な春というよりは、春と「それ以外の何か」があることで、その差分から「春」を感じさせる作品です。ドラマティックでなかなか面白い作品になったと思います。この不穏な感じが先生に好評価で100点いただきました。^^
ここで今日の音楽。この記事を書きながら聞いているBGMをば。
そういえば今年2020年は、ベートーヴェン(Ludwig van Beethoven 1770 – 1827年)生誕250年イヤーなんですよね。今回のお花のテーマは「春」ということもあり、ベートーヴェンのヴァイオリンソナタ第5番ヘ長調 『春』 op.24と、そして第9番イ長調 『クロイツェル』op.47を、イツァーク・パールマン(Vn)さん、ヴラディーミル・アシュケナージ (Pf)による歴史的名盤にて。
パールマン、アシュケナージ共に現代における最高峰の演奏家ですが、1973年録音の本盤では、お二人の若さとエネルギーも相俟って本当にベートーヴェンらしい「生きる意志の強さ」が伝わってきます。ライブではなくて録音なのに、泣けてきてしまうくらいの崇高な情熱がヒシヒシと伝わってくる感動的な名演!ジャケの雰囲気も「ベートーヴェン」を感じますね。
では、お花の話に戻ります。
同レッスンでの、副代表 松島の作品がこちら↓ ^^
生けた順番でいうと2枚目が1作目、1枚目が2作目です。
1作目は黒いシックなガラス器にたっぷりと花材を盛り込んだ作品。2作目は対照的に白い四角柱の陶製花器に生けました。
1作目はガラス器のフォーマルな雰囲気を活かしてバランスよく「春」を生けつつ、ぴょーんと飛び出した石化ヤナギと対旋律的なスイートピーで、右肩上がりのシルエットを作っています。
2作目は、石化ヤナギの古木的な枝の流れをキーに、他の花材も用いてその流れ方向性を強調可視化した作品。素材の個性を読んで、花が生きたいように生ける意図が好評価され、こちらの作品で先生から100点をいただきました。^^
「生の虚無感を通過した危機に、私の内部に無限の生の火を
点してくれたのはベートーヴェンの音楽であった。」
(ロマン・ロラン Romain Rolland 作家 1866 – 1944)
今日の一冊
ベートーヴェンの生涯 (岩波文庫)
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